ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー2017

『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』(Rebel in the Rye)
2019年1月1日に生誕100周年を迎える小説家 J・D・サリンジャーの半生を描いたドラマ。
2017年のアメリカの伝記映画。監督はダニー・ストロング、主演はニコラス・ホルトが務めた。本作はケネス・スラウェンスキーが2012年に上梓した評伝『サリンジャー 生涯91年の真実』を原作としている。

概要

1950年、J・D・サリンジャーは小説『ライ麦畑でつかまえて』を発表した。同書は保守層からバッシングを受けたものの、若者たちからは高く評価され、大ベストセラーとなった。売れっ子作家としての名声を得たサリンジャーだったが、やがて、彼は隠遁者のような生活を送るようになった。本作はサリンジャーがそのような生き方を選択するに至った理由を解明するべく、彼の青年期を描き出していく。

ストーリー

1939年、ニューヨーク。
作家志望のJ・D・サリンジャー(ニコラス・ホルト)は、実業家の父ソル(ヴィクター・ガーバー)と母ミリアム(ホープ・デイヴィス)と共に何不自由ない日々を送っていた。
NYU/ニューヨーク大学を退学したサリンジャーのことを心配するソルは、作家は諦めて仕事に就くことを勧める。母のミリアムはサリンジャーの文才を認め、息子をコロンビア大学に通わせるようソルを説得する。

サリンジャーは、雑誌”Story”の編集者である講師ウィット・バーネット(ケヴィン・スペイシー)に出会い、変えの指導の下、短編を書き始める。
劇作家ユージン・オニールの娘ウーナ・オニール(ゾーイ・ドゥイッチ)に惹かれたサリンジャーは、彼女との交際するようになる。

その後サリンジャーは、エージェントのドロシー・オールディング(サラ・ポールソン)の協力を得ながら短編を描き続けるものの、掲載してくれる出版社はなかった。挫折しかけるサリンジャーを励ますバーネットは、彼の作品を”Story”に掲載したことを伝えて、原稿料の25ドルを渡す。

真珠湾攻撃によりアメリカは参戦し、陸軍に入隊したサリンジャーは”ノルマンディー上陸作戦”に参加し、戦地でも書き続けながら終戦を迎える。過酷な戦争体験で精神を病んだサリンジャーは、治療を終えて無事に帰国し家族に迎えられる。その後も執筆を続けたサリンジャーは、”ザ・ニューヨーカー”に認められて独占契約を結び、さらに”ライ麦畑でつかまえて”を発表しベストセラー作家となる。

登場人物

苦悩しながら生き方を見つけようとする J・D・サリンジャーを演ずるニコラス・ホルト、彼と交際するウーナ・オニールのゾーイ・ドゥイッチ、主人公の才能を認めるウィット・バーネットを好演するケヴィン・スペイシー、同じく主人公を支えるエージェント、ドロシー・オールディングのサラ・ポールソン、”ライ麦畑でつかまえて”を出版する編集者ブライアン・ダーシー・ジェームズ、主人公の両親ヴィクター・ガーバーとホープ・デイヴィス、主人公の妻クレア・ダグラスのルーシー・ボイントン、”ザ・ニューヨーカー”の幹部ジェームズ・アーバニアクとジェファーソン・メイズ、主人公の戦友アダム・ブッシュ、主人公の瞑想の師バーナード・ホワイトなどが共演している。

J・D・サリンジャー (ニコラス・ホルト)

 

1939年、作家を志しコロンビア大学の創作学科に編入した20歳のサリンジャーは、大学教授ウィット・バーネットのアドバイスで短編小説を書き始める。出版社への売り込みを断られ続ける中、ようやく掲載が決定するが、太平洋戦争のぼっ発によって、その掲載は見送られてしまう。召集により戦地に赴いたサリンジャーは戦争の最前線で地獄を経験し、終戦後もそのトラウマに悩まされながら、初長編「ライ麦畑でつかまえて」を完成させる。この作品の成功により、突如として名声を手に入れたサリンジャーだった。

作家を目指す青年から時を経て人気作家となるサリンジャー役は、ニコラスが状況により変化してゆく複雑な内面を自然体で表現。裕福な家庭で育ち、自らの才能を自負する才気走った青年が、作家として熱狂的な支持を得て隠遁に至る気持ちの流れが伝わってくる。

ウーナ・オニール (ゾーイ・ドゥイッチ)

サリンジャーは恋愛にも積極的でダンスフロアでかわいい女の子を見つけると自信満々でアプローチしに行きます。そして恋人になったのが、ニューヨークのエリート階級の人で、女優のウーナでした。戦争から帰るのを待っててね!と言って出ていくのですが、戦争中にあっけなく破局。(恋に敗れたから戦争に行った、という説もあるようです。)
破局の理由は、ウーナが結婚したから。そしてその相手はチャールズ・チャップリン。チャップリンとウーナはかなり歳が離れています。離婚歴が多いチャップリンでしたが、ウーナとは生涯連れ添ったのだとか。
第2次世界大戦に派遣されたサリンジャーが戦地で恋人ウーナ・オニールの結婚を知り、ショックを受ける場面があります。当時18歳のオニールと54歳のチャーリー・チャップリンが結婚したという新聞記事を目にしたサリンジャーは、悲しみに打ちひしがれながらも戦地で小説執筆に打ち込んでいきました。

ウィット・バーネット( ケヴィン・スペイシー)

 

サリンジャーがコロンビア大学で出会った師は、ホイット・バーネット。
このバーネットという人は、雑誌ストーリーの編集者であり、駆け出しの作家を見つけてきて一番に最初に世に紹介することで有名でした。(掲載された人には、トルーマン・カポーティやノーマン・メイラーがいます)

サリンジャーの才能を見出したコロンビア大学の教授で文芸誌『STORY』の編集長であるウィット・バーネット役はケヴィンが人間臭く、サリンジャーと終生のつきあいを続けた出版エージェントです。

ドロシー・オールディング (サラ・ポールソン)

 

ニューヨーカーの編集者ドロシー・オールディングは、男性優位だった1940年代のアメリカ出版界で著作権代理を行っていた女性。
サリンジャーの短編集「ナイン・ストーリーズ」の冒頭に「ドロシー・オールディングとガス・ロブラーノに捧ぐ」と記載されています。
ドロシー・オールディングは、J.D.サリンジャーの書いた文章を初めて高く評価し、評価しただけでなく、出版にもかかわり、終生の良き理解者でした。

クレア・ダグラス (ルーシー・ボイントン)

 

サリンジャーの妻
孤高の作家である夫を陰ながら見守り、執筆活動を支える妻を魅力的に体現している。
当時「ライ麦畑でつかまえて」が飛ぶように売れ、熱烈なファンからのストーカー被害に疲弊していたサリンジャーに「たかが本よ。私は好きでもなかった」とばっさり言い放ち、「気負いすぎないで」と優しく励ますクレア。その可愛らしくも挑発的な姿に、サリンジャーが惹かれていく。

実際に2人が出会ったのは1950年。31歳のサリンジャーと16歳のクレアは交際を経て、約5年後に結婚。夫婦生活は順調とは言えなかったが、映像にも登場する「あの本をこき下ろしたのは君が初めてだ」という言葉通り、サリンジャーにとってクレアは唯一無二の存在であったことがうかがえる。

ジルー (ブライアン・ダーシー・ジェームズ)

”ライ麦畑でつかまえて”を出版する編集者
ジルーに初の長編『ライ麦畑でつかまえて』を出版してほしいと頼む。
サリンジャー:ノルマンディに上陸した時にこれを書いていた。入院していた時も僕を救った作品だ
ジルー:私はとても気に入ったが、ボスはホールデンが理解できなかった。彼はすべてを憎んでる
ホールデンは狂ってるのか?(若者の象徴だから大人には分からないよね)

ソル・サリンジャー (ヴィクター・ガーバー)

サリンジャーの父
落ちこぼれのお前が作家で食べていけると思うか?挫折して落ち込んでほしくないんだ、うちは肉とチーズで財産を築いた。

マリアム・サリンジャー (ホープ・デイヴィス)

サリンジャーの母
母に短編を読ませると褒める。母は「あなたは才能があるわ」と言う。

ガス・ロブラノ (ジェームズ・アーバニアク)

”ザ・ニューヨーカー”の幹部

ウィリアム・マックスウェル (ジェファーソン・メイズ)

”ザ・ニューヨーカー”の幹部

ナイジェル・ベンチ(アダム・ブッシュ)

サリンジャーの戦友

サワミ(バーナード・ホワイト)

サリンジャーの瞑想の師
「禅」が、戦場でしか得ることができない人間が人間を殺すという経験したJ.D.サリンジャーを救いました。
「禅」が、人気作家でしか得ることができない経験、無名作家への酷評と人気作家への絶賛により、人と言葉を信じれなくなり、読者の言葉も信じられなくなったJ.D.サリンジャーを救いました。

サリンジャーについて

サリンジャーは1941年に『The Young Folks』で作家活動を始めて1965年に最後の作品『Hapworth 16, 1924』を発表して以降、2010年に91歳で他界するまで作品を公には一切発表しなかった。2015年以降、サリンジャーの未発表の5作品がいずれ発表されるというニュースが2013年8月にあったが、その話はどうなっているのだろうか。

その時点では5作品には『Franny and Zooey(邦題:フラニーとゾーイー)』などに登場するグラース一家の物語や、短編『The Last and Best of the Peter Pans』が含まれると報道されていた。また2013年11月の、出版されていない短編3作『The Ocean Full of Bowling Balls』、『Birthday Boy』、『Paula』がインターネット上にPDFファイルで流出した、というニュースについて調べてみると、原稿自体はサリンジャー本人が「自身の死後50年は公開しない」という条件でプリンストン大学図書館に寄贈し、その図書館では読むことができたとのこと。こうした作品も含め、今後が気になるところだ。もしサリンジャーの未発表作品が改めて公式に出版されたら、日本でも『キャッチャー・イン・ザ・ライ』のように、村上春樹氏による翻訳版が期待できるかもしれない。

サリンジャーの小説の映画化については、短編小説『Uncle Wiggily in Connecticut(邦題:コネチカットのひょこひょこおじさん)』が1949年にハリウッドで『My Foolish Heart(邦題:愚かなり我が心)』というタイトルで映画化されたものの、評価が低くサリンジャー自身もこの映画をみて激怒して、それ以来は著作の映画化を許可しなかったとのこと。著作について指示が記されているというサリンジャーの遺言のなかに、おそらく映画化についても一筆あるのではないだろうか。そうしたことから彼の小説を映画で観ることは当面は(もしかしたら永久に)難しいだろうけれど、読み継がれる著作を生み出したサリンジャー本人について、こうして映画で観ることができるのは興味深い。

34歳の時(1953年)からアメリカ北東部ニューハンプシャー州コーニッシュで静かに暮らし続け、プライバシーを厳守した作家本人にとってははなはだ不本意であり彼岸でご立腹かもしれないが、読者にとっては著者が執筆した時の背景を知ることで、著作に対する距離感や感じ方がまた新鮮になる、というよいことがあるはずなので、そうした視点から寛容になれるのではないかと思う。

関連の映画など

マイ・ニューヨーク・ダイアリー

90年代、ニューヨーク。作家を夢見るジョアンナは、老舗出版エージェンシーでJ.D.サリンジャー担当の女上司マーガレットの編集アシスタントとして働き始める。日々の仕事は、世界中から毎日大量に届くサリンジャーへの熱烈なファンレターを処理すること。しかし、心揺さぶられる手紙を読むにつれ、飾り気のない定型文を送り返すことに気が進まなくなり、ふとした思いつきで個人的に手紙を返し始める。そんなある日、ジョアンナが電話を受けた相手はあのサリンジャーだった。
1時間41分 2022年

ライ麦畑でつかまえて

『ライ麦畑でつかまえて』( 英: The Catcher in the Rye)は、J・D・サリンジャーによる長編小説。1951年7月16日にリトル・ブラウン社から出版された。日本語訳版の題名としてはこの最も広く知られたものの他にも、『ライ麦畑の捕手』『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『危険な年齢』などがある。

高校を放校となった17歳の少年ホールデン・コールフィールドがクリスマス前のニューヨークの街をめぐる物語。口語的な文体で社会の欺瞞に対し鬱屈を投げかける内容は時代を超えて若者の共感を呼び、青春小説の古典的名作として世界中で読み継がれている。

フラニーとゾーイー

『フラニーとゾーイー』(英: Franny and Zooey)は、J・D・サリンジャーが1955年1月29日に『ザ・ニューヨーカー』に発表した『フラニー』(Franny)と、1957年5月4日に同誌に発表した『ゾーイー』(Zooey)の連作二編の小説を1つにまとめたもので、『ライ麦畑でつかまえて』に並ぶ、代表作のひとつ。1961年9月14日刊行。
グラース家の末っ子である女子大生のフラニーと、そのすぐ上の兄で俳優のゾーイーをめぐる、1955年11月のある土曜日の午前中から、翌週の月曜日にかけての物語である。

※村上春樹訳では『フラニーとズーイ』

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ゆう

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