マイ・ニューヨーク・ダイアリー サリンジャーとファンの窓口係 2022年1時間41分

『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』(My Salinger Year)は2020年のアイルランド・カナダのドラマ映画。監督はフィリップ・ファラルドー、出演はマーガレット・クアリーとシガニー・ウィーヴァーなど。1990年代のニューヨークで老舗の出版エージェンシーに就職し、伝説的隠遁作家J・D・サリンジャーと彼のファンを結ぶ窓口係となった作家志望の女性を描いた青春奮闘記で、ジョアンナ・ラコフが2014年に上梓した自叙伝『サリンジャーと過ごした日々』を原作としている。

あらすじ

1995年、作家になることを夢見る若い女性、ジョアンナはニューヨークに移住することになった。ジョアンナは同地で最も歴史のある出版エージェンシーに職を得て、J・D・サリンジャーの代理人を務めることになった。しかし、ジョアンナはサリンジャーの著作を1冊も読んだことがなかったため、特に感慨を覚えるようなこともなかった。隠遁生活を送るサリンジャーと接する機会はなく、ジョアンナの仕事は専らサリンジャーに送られてくる膨大な量のファンレターに返信することだった。会社からは「サリンジャーはファンレターを読みませんので悪しからず」とだけ返信するように命じられていたが、ジョアンナは幾人かの熱心なファンに対して丁寧な返信を出していた。そんなある日、誰もが想定していなかった出来事が起きた。サリンジャーが『ハプワース16、一九二四』を単行本として世に出す意欲を見せ、出版社に仲介してくれるようジョアンナに依頼してきたのである。

本作はジョアンナがサリンジャーとその言葉に触発され、自己を確立していく姿を描き出す。

登場人物

ジョアンナ

作家になることを夢見る若い女性、ジョアンナはニューヨークに移住することになった。ジョアンナは同地で最も歴史のある出版エージェンシーに職を得て、J・D・サリンジャーの代理人を務めることになった。(マーガレット・クアリー)

マーガレット 女性上司

老舗出版エージェンシーの編集者。J・D・サリンジャー担当の女性上司。ジョアンナはマーガレットの編集アシスタントとして働き始める。(シガニー・ウィーヴァー)

ドン: ダグラス・ブース(森田了介)

ジョアンナの恋人で作家をめざす大学生。

ダニエル: コルム・フィオール(山中誠也)

出版社の共同経営者?ジョアンナには優しくしてくれている。妻のヘレンとマーガレットの両方を愛している。映画の後半で亡くなる。躁うつ病で自殺した。二人で看病した。

ジェニー: ショーナ・カースレイク(英語版)

NYで仕事をしている作家志望の仲間。ジョアンナの良き相談相手で、ウォルドーフでランチなどを一緒に食べたり須江う。彼女は自分の才能に見切りをつけて田舎に帰ろうと考えている。
※ウォルドーフ・アストリア・ニューヨーク:マンハッタンのミッドタウンにある高級ホテル。レストランやイベント会場などがある。

ヒュー: ブライアン・F・オバーン(英語版)(喜多田悠)

出版エージェンシーの契約、法務、コピーライト担当。ジョアンナの仕事部屋の隣人。手紙の返事の書き方など仕事を教えてくれる。なんでも聞ける良い人。いつもセーターなどを着てラフな格好。

少年: テオドール・ペルラン(英語版)

 

マックス: ヤニック・トゥルースデール(英語版)

出版エージェンシーの社員。マーガレットとは仲が良い、一緒に出版の計画などを行っている。

カール: ハムザ・ハク(英語版)

ジョアンナの昔の恋人。音楽家で管楽器を吹いている。

パム: レニー・パーカー(英語版)

 

J・D・サリンジャー: ティム・ポスト

ジェリー・サリンジャー。マーガレットはジェリーと呼ぶ。サリンジャーはジョアンナと電話で話すとき、ジョアンナのことをスザンナと呼ぶ?

感想

サリンジャー作品の力が、人生を動かす瞬間

原作はジョアンナ・ラコフ「サリンジャーと過ごした日々」
90年代、J.Dサリンジャーのエージェントでもあった老舗出版代理店に勤務した本人の回顧録です
90年代といえば学生だった私もサリンジャー作品の独自の世界にハマっていた頃でした
作品のほとんどは1940年代のものだと思うし、90年代ではすでに伝説の存在、という感じで
家のまわりに高い塀を築いて暮らす人間嫌い、世捨て人的な書かれ方をしていました
ジョアンナはサリンジャーの作品を未読だったことが、幸いしたのだと思う
良い意味で、対象に思い入れがない=接し方が自然になる、ということもあり得るのでは・・
当時70歳代だったサリンジャーは、ジョアンナとの事務的な会話を通し、若い事務員が抱く文芸への興味、夢をそこはかとなく感じたもよう
それを受け一言アドバイスをかけたり・・
そんなやりとりを普通に行えるサリンジャーは、やっぱり特段人間嫌いだったわけではないんだ、嘘はキライだろうけど特に偏屈だったわけでもないんじゃないの・・
と色々想像をかきたてられました
担当だというのに、「ライ麦畑」すら読まないジョアンナも、面白いなと思う
恋人(作家の卵)は「読んでないなんて信じられない」といった態度
皮肉にも、作品の力は彼の望まない方向へ、ジョアンナを連れ去るとも知らずに・・
次第にそりが合わなくなってきていた彼の帰りを待ちながら、思い立ったようにサリンジャーの作品を読みあさるジョアンナ
そして帰宅した恋人に、ずっと言えなかったコトバをはく
「別れましょう」
ずっと隠してきた感情を表に出すことができたのは、サリンジャー文学に触れたから・・そんな気がしてならない
見せかけだけのもの、虚飾、嘘・・サリンジャーがもっとも嫌いそうなことにとらわれていた過去に決別!
人生や心を動かす文学の力を、すごくシンプルなカタチでつきつけられました

マーガレット・クアリーをはじめてみたのはタランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
やんちゃなヒッピー娘を演じていました
本作の役柄とぜんぜんちがう・・!
知性的で人の心の機微を推し量るジョアンナ役も、すごくしっくりきていますね・・!
役者の実力を感じます

原作も読みたくなりました

『サリンジャーと過ごした日々』を原作とした自叙伝が原作との事、
自慢話に捉われずサリンジャーの言葉に触発され、自己を確立しようとする姿に好感が持てます。

物語自体は、作家志望である主人公ジョアンナの日々奮闘を描いてます
ジョアンナを演じたマーガレット・クアリーの知的な印象も効果的で、活発な探求がみられました。

一時期、ピチョンやフィッツジェラルドを読み漁った時期があり、
サリンジャーを映さない演出は、ファンへの配慮として良かったです。

ジョアンナとマーガレットの関係は『プラダを着た悪魔』を思い出しました
人を素直に評価できる上司って素晴らしいよね。

平凡ではなく賛否両論

アメリカの若い女の子のファッションといえば、上がTシャツ・タンクトップ・セーターで、下は決まってジーンズ…というイメージしかなかったので(ジョアンナの女友達はこの格好)、ジョアンナのお嬢様っぽいワンピースや花の刺繍がいっぱいのブラウスに目が行った。

1995年時点でタイプライターが現役なことにまず驚き、ワードプロセッサを経ないでタイプライターからいきなりパソコンに移行した点も面白かった。

ニューヨークが舞台とはいっても、とても1995年…現代とは思えないクラシカルな雰囲気の映画で、序盤から中盤までは心地よく視聴した。
ジョアンナ役のM・クアリーは表情が生き生きしてて可愛いし、女上司マーガレット役のシガニー・ウィーバーも、他のキャストもよかった。

ところが中盤から終盤にかけては疑問な点、不満に思う点が増えていった。

平然と二股を続けるジョアンナって「誠実」だろうか?
女友達の部屋に居候しながら、そこへ異性を引き入れるとか。

ジョアンナと、ファンレターを寄越したサリンジャーのファンたちとの交流をもっと描くと思っていたのに残念だ。
ジョアンナとサリンジャーの電話を通じてのやり取りももっと聞きたかった。
なぜ会社を辞めなくてはいけないのか? 働きながら書けばいいのに。
それにせっかく一人前になったところで辞められたら、会社側も迷惑だろうに。

上記のようにジョアンナとサリンジャーのファン、ジョアンナとサリンジャーとの関係性の描き方が十分ではないために、ファンレターへの個別返信という越権行為が、前任者たちはダメで、なぜジョアンナだけは許されたのか、結局よく分からなかった。

逆「木綿のハンカチーフ」かよ 地方出身の文学少女による上京物語

原作は作家志望でオハイオからNYへ出て来た、ジョアンナ・ラコフの自伝『サリンジャーと過ごした日々』。

“まるで文芸版『プラダを着た悪魔』”という、アマゾンの商品説明のコピーが正鵠を射ている。
おそらく、配給会社か、ソフト販売会社のスタッフが、知恵を絞った結果だろうけど。

舞台は1995年のNY、マイクロソフト社のウィンドウズ 95が発売され、オフィスでは一挙にペーパーレス化が叫ばれ始めた時代。

当時の老舗出版エージェント会社は、亡くなった作家が好きな作家志望者を厭い、PC嫌いでタイプライター使用という件に納得。
ワープロさえまともに使えないのに、突然にパソコンを設置され、「以後、総ての文書はワードとエクセルで作成して、メールで送信すること」とのお達しが来た時は、皆がパニックになったっけ。

しかし、1972年生まれのラコフは、サリンジャーを読まない世代なのか。
印刷会社を母体とするほぼブラック企業の出版社二社に関わり、後を絶たない退職者補充のため毎日、三、四名の面接を担当。
ブームは衰えたと言え、日本の女子学生場合、八割方は卒論のテーマにサリンジャーを選んでいたものだったよ。

T・ピンチョンは勿論、『V 上・下』や『重力の虹』等、難解な作品で知られるトマス・ピンチョンしかいないが、A・ライスはアン・ライスか。
他、アガサ・クリスティやディラン・トマス、フィッツジェラルド等が名前やフォトで登場、レイチェル・カスクは実名で顔も見せもする。
英米文学好きには、興味をちょっと引く作品かも……まあ、ちょっとだけだけれどもね。

それにしても、作家志望なら、サリンジャーくらい読んでおいて然るべきだろう。
かつて、カリフォルニア州の学校や図書館から、ケン・キージーの『カッコーの巣の上で』等と同様に、『ライ麦畑でつかまえて』も締め出しを喰ったことがあった。
そのくらい、1990年代のアメリカが、地域を問わず全体として超保守化していたということか。

W・P・キンセラ著『シューレス・ジョー』(映画『フィールド・オブ・ドリームス』の原作)には、そのあたりのことが描かれているし、サリンジャー自身も実名で登場する。
映画ではサリンジャーがテレンス・マンに変名され、俳優も黒人のジェームズ・アール・ジョーンズが演じていた。
裏事情は知らないものの、気難しいサリンジャーからクレームが入ったと憶測する。

内容は松本隆が作詞した歌謡曲、「木綿のハンカチーフ」の男女入れ替えを想像させる、地方出身の文学少女による上京物語と言ったところ。

チャップマンの一件とは

1980年チャップマン(当時25歳)によるビートルズのジョンレノン(当時40歳)殺人事件。

マーク・デイヴィッド・チャップマン(Mark David Chapman、1955年5月10日 – )はアメリカの服役囚。ジョン・レノン殺害犯。

1980年12月8日22時50分ごろ、ニューヨークのセントラル・パーク西側の72番通りにある、ジョン・レノンの自宅であるダコタ・ハウスの前でレノンを銃撃し、その場で逮捕された。レノンの妻オノ・ヨーコが「私達の安全が脅かされる」として仮釈放に反対している事もあり収監が継続されている。12度目の仮釈放申請が2022年9月に却下されたので仮釈放は早くとも2024年である。

チャップマンはアパート前の草場の中でレノンの帰りを数時間待ち、レノンが到着すると背後から呼びかけた直後に拳銃を5発撃ち、内2、3発が胸に命中した(他は肩)。ハウスの警備員がすぐに駆けつけ拳銃を蹴り飛ばした。銃撃した後もチャップマンは現場にとどまり付近をうろついたり『ライ麦畑でつかまえて』を読んだりしている間に警官が到着してチャップマンを逮捕。『ライ麦畑でつかまえて』の主人公ホールデン・コールフィールドにのめり込んでいたらしい。

レノンの容態は急を要したため救急車を待たず、駆けつけたパトカーの後部シートに乗せられ、近くのルーズヴェルト病院に搬送されたが、出血多量による死亡が23時ごろ確認されている。

 

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ゆう

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